竹内洋岳さんの、山に個性を与えるという考え方

竹内洋岳さんは、一見弱々しそうに見える風貌なのに、とてつもない、鉄のような硬い意思の持ち主だ。

そして非常に強運の持ち主でもある。

彼は登山家であるが、単なる登山家ではない。8000m級の山を次々と制覇しており、日本人初の8000m以上の山、全14座登頂を達成した人なのだ。

彼が山に興味を持ち始めたのは、驚くような理由だった。
高校生になった時、その学校では、全員部活に入ることを奨励していた。そこで彼が仕方なく選んだのが、山岳部だったのだ。
なぜ山岳部を選んだか、というと入部希望者の列が誰もいないくすぐに手続きができたからだった。早く終われば早く家に帰れるから、入部者が少ない、空いている部を選んだ、とうのが山岳部入部の理由だった。

実際山登りをし始めると、彼は途端に山の魅力に取りつかれたという。
竹内さんは、自分では勉強もできず、さりとて運動にも興味がなく、不得意だった。

高校生では国内の山々を登るのみ、だったが、海外の山を登りたいと思っていた彼は、どうすればいいのか相談したところ、大学の山岳部に入れば登れるよ、とアドバイスを受けた。

彼は、山に登りたい、と言う理由だけで、大学に進学したのだった。

その後100万円という大金をなげうって、(実際は祖父がそのお金を調達してくれた)初めてのヒマラヤのシシャバンマへの登山に挑戦した。日本人総勢20名のチームを作っての登山だった。

彼はこの時、こう思った。

自分は学校では勉強もできず運動もできなかった。

だから学校には僕の居場所はなかった。

だけど山には自分に適した居場所がある。

その後竹内さんは、大きな大きな事故に会う。

雪崩によって背骨を折り、肺も半分つぶれてしまう。他の登山隊によって助けられたのだが、治療のための下山前、一緒に登っていた人のほうが重症だったため、少ない酸素ボンベはその人の元へ運ばれた。しかし、翌朝亡くなってしまったため、その人が使い切れなかった残りの酸素ボンベを使うことができ、そして彼は助かったのだった。

なんという強運だろう。

もし重傷者が生き延びていたら、竹内さんの運命は変わっていた。

その後、背骨にチタンシャフトを埋め込む手術でなんとか生還するものの、もう登山は無理だと言われた。

しかし1年の辛いリハビリにより、再び雪崩に巻き込まれた同じ山、ガッシャーブルムに、再び登ることになるのだ。

彼は、その山に登っている途中で、ちょうど雪崩のあった場所に来たところで、こう言う。

今日は、去年より一歩でも進めているんで、嬉しい。

彼は、この山の登頂も果たした。驚くべきことだ。

彼がなぜ、たった1年前に雪崩に巻き込まれて生死をさまよった危険な場所に戻り、再び登ろうと思ったのだろう。

登山というのは、自分の足で登って、自分の足で下りることだと思う。

だから、登り直すのではなく、下り直したんだと思う。

山は登るのが登山なのではなく、登って下りるのが登山なのだ。下りてきて、初めてこの山に登った、と言えるのだ。

竹内氏が最初に登った時は、人の手によって運ばれて下山したため、自分で下りることができなかった。

山に登って、下りれない、ということは死を意味する。死んでもいないのに自分で下りれなかったことがどうしても悔しかったのだった。

そんな彼に、山とは何なのか?と聞くと、面白い答えが返ってくる。

山とは個性、だという。

高い山がすごい、というわけではない。
高いということはひとつの個性。
まだ誰も知らない山、というのもひとつの個性である。

彼はかつて、誰も登ったことがない山に登ったことがある。ネパールにあるマランフランという山だ。

私が登ることで
マランフランは個性を増していくし
マランフランという山に歴史を与えていくことになる

こんなふうに山をとらえている人がいるだろうか?

山に個性を与え、歴史を与える、とうのは本当にカッコいい言葉だ。

想像を絶する登山を乗り越えてきた人だからこそ、こんな言葉が出てくるのだろう。

竹内洋岳(たけうちひろたか)さんってこんな人

生年月日 1971年1月8日
出身 東京都
学歴 立正大学仏教学部

株式会社ICI石井スポーツ所属で、立正大学客員教授。

『文部科学大臣顕彰、スポーツ功労者顕彰』
第17回「植村直己冒険賞」
第15回「秩父宮記念山岳賞」を受賞

高校で山の魅力に出会う。
日本で初めて、8000m以上の山、(世界で14個ある)すべてに登頂した。2018年現在、いまだに唯一の日本人となっている。
こんな人が日本にいたんだ、と驚いた。

彼は面白いことを言っている。
空気の薄い山に行くと味覚が変わるんだそうである。いつもの味がいつもと変わり、食事が美味しくなくなる。
ところがひとつだけ味が変わらない飲み物がある、それがコーラ、というのだ。

だから、山に登る時は、必ずコーラを大量に運び、ベースキャンプでは必ずコーラを飲む、とのことだ。

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